不幸なお兄様。

「お豆腐が食べたいものだ」

鳥栖誇負さんは、にこにこしながら言いました。

鳥栖誇負さんがにこにこしているのには理由あります。今日は学校で表彰の式があり、鳥栖誇負さんは優秀な人間として表彰されたです。

校長先生が次のように言います。
鳥栖誇負さんはいつもにこにこしているので気持ちがいいです。みんなも鳥栖誇負さんのようににこにことしていましょう」
校長先生は昔つらいことがあり、ご苦労をしながら生きてきたようです。そうしたご苦労を鳥栖誇負さんは知っていたのでいつも鳥栖誇負さんは校長先生のようになりたいものだと思っていました。そうした校長先生に表彰されたので、鳥栖誇負さんは嬉しい気持ちになって、余計ににっこりしました。

どうしようもない絶望感もあるものだ。
例えば道を歩いているときに遠くを見たとする。その遠くにはたいてい山があり、その山の中腹にはちらちらと光のようなものが見える。その光はおそらく電灯のようなものだろう。なんらかの理由でその山の中腹には電灯が灯されることになり、電灯が灯されているということは、そこに人の活動があるのだ。だがしかし、その山の中腹たどりつくことはないだろう。僕の日常は学校に行くことであり、にこにこすることであり、校長先生に表彰されるということだからだ。もし今後山登りを生業とするのならば中腹に行くこともできるだろうけど、にこにこしているうちは山登りはできない。なんだろう。あやまればいいのかな。

「お豆腐が食べたいものだ」

吉多像さんは校庭を走ります。なぜなら、お兄様に「吉多像、お前は足が速いのだ。だから校庭を走って走ることを鍛えるのが良いのだ」と言われたからです。吉多像さんのお兄様は不幸です。幼い頃はボール大会に入れてもらえず、後ろのほうでじっとするように言われていたからです。でも、お兄様は「なにくそ。負けるか」と努力をして、人を蹴落としました。そして、手に職をつけて、ボール大会のことは忘れて、お金をもらえるようになりました。結婚をして子供ができたので、もう不幸ではなくなり、鳥栖誇負になりました。鳥栖誇負さんになったお兄様は学校に入ってにこにこするようになり、校長先生によい印象をもたれるようになり、表彰されました。こうしたお兄様の鳥栖誇負さんが校庭を走るように言ってきたので、吉多像さんはお兄様の鳥栖誇負さんのように不幸にはなるまいと、校庭を走るのです。なんだろう。あやまればいいのかな。

押し入れに靴下があった。

比較的厚い。