富海地の憎しみ・1。

お墓山には小屋があります。その小屋は鎌をもった狂人が出るので、お母様からは近づかないように言われています。でも、その小屋はおもしろいので、富海地さんは友達と、その小屋によく潜入しました。

「探検ごっこだ!」
「おうよ!」

富海地さんには仲間が3人います。ひとりはのっぽの更市蚤、ひとりはのっぽの吐露沢です。今日も仲間と小屋に行き、おもしろい探検をしました。

探検が終わると、もうすっかり暗くなっています。お墓山には人殺しが出るので、富海地さんは早く帰ろうと提案しました。更市蚤も吐露沢も殺されてはたまらないので、早く帰ることにしました。

「申し訳ないが、君たちは豊原小の者かい?」

どこからともなく、薄気味悪い、それでいて小汚い声が聞こえてきました。吐露沢は我慢できなくなり、「誰だ!そんな小汚い声を出すのは!」と叫びました。だがしかし、あたりはシーンと静まり返り、誰の声もしません。更市蚤も我慢できなくなり、「姑息な真似をするない!」と叫びました。それでもあたりはシーンと静まり返り、小汚い声は聞こえてきません。

富海地さんは下等な二人とは違い、鮮明に物事を考えるほうなので、じっと目を凝らし前方を見つめました。すると、むくむくと煙が出てきて、奇っ怪な老人が出てきました。

「やや。狂人!」
「やや。人殺し!」

下等な二人は罵りの言葉をあげましたが、富海地さんはやはり鮮明です。暖かい表現で声をかけました。

「おじいさんはどこからきたんだい。そうして、なんで煙のようにむくむくと出てくるのだい」

その言葉を聞いた老人はすっかり安心しきって、身の上を話し始めました。老人の話では、このお墓山にはかつて大きなお城があり、お殿様や婦人が暮らしていたとのことでした。そして、この老人はこのお城の小間使いとして、清掃をしていたとのことでした。しかし、お殿様の子供がこの老人のことをたいそう気に入り、一緒に探検に出ることになったそうです。その探検はおもしろいもので、大きな砂漠の中でミイラを探したり、鬱蒼と茂るジャングルの中でミイラを探したりするものでした。老人と子供はいろいろな場所に行き、いろいろな人に合い、ついに苦労をすることになりました。その苦労とは、ある立場にある、三人の人間を救済するというものです。ひとりはお金持ちの人間、ひとりは地位の高い人間、ひとりは僧侶の人間です。

老人と子供は、苦労をするために、さらに深い探検に出かけました。