之助さんのお手伝い。

お父さんの津濡裳祇が欲しくて仕方がない之助さんは、お父さんの手伝いをしてみることにしました。

「お父さん、おいはお手伝いをしたいのだ!」
「そうか、おまいはお手伝いをしたいのだな。それならば!」

お父さんにそう言われた之助さんは、みるみる顔が青ざめて、小さい人間になってしまいました。

「こりゃいかん!」

お父さんはそう言うと少し驚いたふりをして、動きが少し早くなりましたが、もうどうしようもありません。お父さんは生きてきたことを後悔し、小さくなってしまった之助さんを背負い旅に出なくてはなりません。それは贖罪の旅です。津濡裳祇を売り歩く贖罪の旅です。

之助さんを背負ったお父さんは、隣町まで来ました。そうしてしばらくすると、もといた町に戻ってきました。そしてしばらく考えたあと、また隣町にやってきたのです。

「はーししゅうー、はーししゅうー、トウドとうどの津濡裳祇だよー!トウドとうどの津濡裳祇だ!米かぶりの之助さん、津濡裳祇かぶりのお父さん!」

お父さんは決意をしたので、こうした独創的な売り声を作り出すことができます。

すると、御領地の役人が三名、コヌテを抜いてお父さんに飛びかかってきました。

お父さんは小さい頃、仲間が三人いました。お父さんは三人の仲間と、よく授業を抜け出して、みんなを欺く遊びをしていました。あるとき仲間の一人が「おいは欺きを止める」と決意して、真人間になりました。お父さんはアナーキストなので、真人間というものは畜群だと罵りだしましたが、どうもいい気分になれません。

「おりも欺きを止めねばならんか」

お父さんはそう考えると少し小さくなり、之助さんになりました。

之助さんとなったお父さんはコヌテをむんずと掴み、むんずと投げ出しました。役人たちは「こりゃあいかん」と申し訳ない気持ちで逃げて行きました。

役人に刃向かったので、之助さんとなったお父さんはお父さんに戻りました。そして、お父さんは自由になったのです。

しかし、之助さんは芳しくありません。どんどんなにもできなくなり、つらくなりました。

お父さんは、ここで初めて、人をともぬことを知ります。津濡裳祇だけではなく、ともぬなれなければ之助さんは辛いままなのです。

そのとき、一筋の光が聖堂に入り込んできました。それは聖アベンティヌスのともぬりです。津濡裳祇が3つに折れ4つに折れ、いたるところで濡裳が成長していきます。

「お父さん・・・お父さん・・・ありがとうお父さん・・・」

之助さんはそうつぶやくと大きく大きく大きくなり、お父さんの津濡裳祇を見ることができました。


お父さんはもう泣いていません。お父さんは之助さんでもありません。これが、之助さんのお手伝いだったのです。