富海地の憎しみ・2。

老人と子供は、まずはお金持ちの人間が住んでいる市に行きました。

その市には人間がたくさんおり、そうした人間を蹴落として生き延びたのがお金持ちの人間です。お金持ちの人間は、両親から姑息に生きるように教わってきました。例えば、安い商品を購入して、それを比較的高い値段で売りさばくといった具合です。こうした姑息なことばかりしていたので、お金持ちの人間はお金持ち人から憎まれはしますが、愛されません。「おーいおいおい。姑息になれというから姑息に生きてみたけれど、これはいったいどうしたことだ。どうにもこうにもならないじゃないか。おーいおいおい。おーいおいおい。」お金持ちの人間は、こんなふうに泣いて、つらい思いをする毎日を送っていました。

老人と子供は市をさまよい、お金持ちの人間のところに行きました。お金持ちの人間は、他の人間が訪ねてきてくれたことをたくさん喜び、老人と子供を暖かく迎えました。暖かい食べ物を与え、湯に入れ、暖かい布団で寝かせつけました。お金持ちの人間は、このように人に尽くすことはしたことがなかったので、うれしい気分になりました。

「ああ。俺は今までなんという生き方をしてきたのだろうか。両親からは姑息に生きるように教わり、人を蹴落としてばかりいた。だがしかし、これでは仲間意識が芽生えないではないか。今回、このような老人と子供がきてくれたことで、俺はこれまでの生き方を思い返すことができたかもしれぬ。ああ。これからは姑息に人を蹴落としたり、安い商品を購入して、比較的高い値段で売ることはやめよう。それよりも、商品の質や性能を重視して、比較的適正な値段で売ることにしよう。そうすることで、仲間意識が芽生えるのだろう。ああ。それにしてもあの老人と子供は、なぜこの市にきたのだろうか」

お金持ちの人間はこのように考え、夜が明けたら老人と子供に訪ねました。
「なぜこの市にきたのか?」
老人は答えます。
「私たちはお殿様の小間使いと子供です。探検をしているうちに、苦労をして人間を救済するようにいわれたのです」

これを聞いたお金持ちの人間は、たちまち恥ずかしい気分になり、怒り出してしまいました。

「こいつらめ!こいつらめ!こいつらめ!こいつらめ!こいつらめ!」

しかし、お金持ちの人間はどこかすっきりしたようでした。

老人と子供はわけがわからないまま逃げ出しましたが、子供は変化しました。子供の右腕が腐ってしまったのです。老人は驚きましたが、子供は鮮明です。「老人よ、驚いてはいけない。これは、人を救済することの対価で、いたしかたないことなのです。通常、人が救われると、その分のいやな感じは誰かが引き受けないとならないものなのです。だから私の腕は腐るのです」

老人は悩みましたが、お殿様の子供の戯言を無碍にするわけにはいきません。

老人と子供は、次の苦労をするために、地位の高い人間を探す探検に出かけました。