幻視人。

本格的にSF小説を読み出したのは、大学一年生の頃からです。

“SF読むぞ!”と思って初めて読んだのは、ウィリアム・ギブスンサイバーパンク小説「ニューロマンサー」です。

新語症的な言葉の渦にくらくらしながらページを進めていったのを記憶しています。

その後、ちゃんとSF小説を読もうと思って、クラークやアシモフなど、オールディーズのの作品を読みふけりました。

僕はキューブリックの映画が好きで、やっぱり「2001」も好きだったりするんで、その原作でもあるクラークの小説「2001」も面白く読みました。
(原作っていうと誤弊があるかも。小説は映画と同時進行で進んでいったわけだし。)

「2001」読んで、「2010」読んで、「2061」読んで、「3001」読んで、“クラークってすげーなー。”って思いました。
キューブリックの映画版は、もうほとんど神話みたいに神々しい感じがして、モノリスも“人類の進化を促す神秘の存在”みたいな感じで描かれているけど、小説版の痛快なところは、シリーズが進むごとにモノリスの神秘的な部分がそがれていって、「3001」になると、人類より進化して肉体を捨てた生物が使用する“単なる機械”みたいなものになり下がっています。
ここが気に入ったところです。
僕たち人間がPCを利用するのと同じ感じで、進化した生物はモノリスを利用するんです。
だから、人間側もモノリスに対して機械的なアプローチができます。
(この辺は小説のクライマックスになるのであまり書かないようにしておきます。この文章を読んだどこかの誰かが、「3001」に興味を持って読んだときに減なりしないように、あまり触れないようにしておきます。)

クラークは“あまりにも進歩した科学は魔法と見分けがつかない。”って言葉を残しましたが、まさしくその通りで、彼の中ではモノリスも神秘にはちがいないけど、進化した科学の中に取り込まれています。
オカルト的な偉大さではなくて、単なる未知のものに対する尊敬の念みたいなものが見て取れます。

この辺のニュアンスが好きなんです。

僕たちには類推する能力があるから、神秘的な(っていうか偉大さを感じるような)経験をすると、その背後に何か意図みたいなものがあるんじゃないか?と、想像しがちです。

そこから、さまざまな世界像を思い描くことができます。

そうした世界像はとても強力で、時に理念化されたり体系化されたりします。
ある時代やある文化の中では、そうした類推の能力で描かれた世界像によって、生活することそのものが規定されたりすることもあります。

クラークの好きなところは、偉大さや尊敬の念のみを真摯に取り扱っているというところです。
単純に“すごいものはすごい”っていうか、“偉大なものは偉大”っていうか、それだけっぽいんです。
(とても主観的だけど、僕はそう感じました。)

なにか現実離れしたオカルティックな世界像を体系化して、それに偉大さを感じるっていうよりも、ちゃんと合理的なんだけど、その合理さに偉大さを感じるっていうか・・・あー・・・うまく表現できてないです。。。

クラークの世界は神話じみてるけど、合理性的な神話って感じです。

未知のシステムに対する畏敬の念って感じ?
(このニュアンスは、H・P・ラブクラフトのコズミック・ホラー的な感覚に通じるかもしれません。)

で。

クラークは、ラーマシリーズ(「宇宙のランデブー」のシリーズ)も好きです。
二作目以降、ジェントリー・リーと合作になって、ページ数ばかり増えてだるかったりもするんですが、それはそれで良しとして、面白いんです。
宇宙の彼方から円筒形の謎の物体がやってきて、地球人はその調査に向かうっていうストーリーです。
ラーマはゲーム化もされていて、PSでも出ています。
海外のゲームだから、もうすごくって・・・すごいっていうのは、個性的過ぎるんですw
・・・クソゲーっていえばそれまでかもしれませんが、一筋縄では行かないゲームです。
(リターン・トゥ・ゾークみたいな感じ?)
で、このゲームにクラーク出演しているんです。
もう10年くらい前のゲームだから、当時のクラークは80歳くらいだったと思います。
もうじいちゃんなんですが、杖を片手にモンスターと戦ったりと、元気いっぱいです。

ティーブン・バクスターと競作で書いてたのもあったっけ・・・リーと違って、適度に長くて読みやすかった気がします・・・「過ぎ去りし日々の光」だったっけ?・・・わすれましたw

で。

最近クラークは何してるのかなーって思って、インターネットで調べてみたら、なんと、今年の3月にお亡くなりになってるんですね。
とても残念なんですが、90幾つまで生きたそうです。
生きている内に、地球外生命体の痕跡が見つからなかったことを残念がっていたようです。

タイトーのゲーム「ダライアス外伝」に、“幻視人”ってタイトルの曲があってお気に入りなんですが、クラークはまさしく幻視人だと思います。

しかし、単なる空想をする夢想家ではありません。

未だ無い、未知のシステムに憧れる、合理性的な幻視人なんだと思います。

そうしたわけで、クラークの小説をまた読んでみようかなぁと思いました。