異端の類型。

昨日の深夜、部屋でボーっとしていると、視界を右から左へと、キラキラと光る物が飛んで行きました。


キラキラと光りながらゆっくりと優雅に、まるで世界の泥沼をあざ笑うかのように軽快に、決して誰にも気に入られることも受け入れられることもない異端的な黒光りする姿をさらしながら、巨大で醜悪なゴキブリは飛んで行きました。 


偉大なゴキブリは、私にこんなふうに語りかけてきます。


「私は誰でもなく、私は誰でもない。 ただ、逸脱の黒。 ただ、醜悪な漆黒。 あなたは私を知った瞬間、私のことを殺すだろうが、私は“個”にもなりえたことのない、異端の類型。 “ここ”や“それ”と同じ意味で表現されるイレギュラーの全体なのです。 私は“私自身”足り得たことはなく、私は“私自身”足り得ない。 私はあなた達の嫌悪感の類型として、健やかに死にます。 あなたは私を排除したことにより、また安住の日常を過ごすことができるでしょう。 おめでとう。 さようなら。」

3億年の知恵を一握りで捻り潰す人間の理性のありがたさに感謝。 





解説。
人を好きになったり嫌いになったりするときって、特定のAさんに向かって“好きだ”とか“嫌いだ”とか思います。
Aさんは好きだけど、Bさんは嫌いとか思います。
でも、ゴキブリはそうはなりません。
ある特定のゴキブリは好きで、特定のゴキブリは嫌いとはならなくって、ゴキブリ一般が嫌いってなっちゃう。
だから、ゴキブリは嫌悪感の類型ってことです。