短編小説:「女性について」

夢に女性が出てきたので葬ってやらねばならぬ。

彼女は魅力的な女性であり、魅力的な女性であるので、健やかに葬ってやらねばならぬのだ。




僕は彼女と親しい仲にあるようだ。




だがしかし、何らかの理由で、僕は彼女と別れなければならない。その彼女は、とても魅力的な女性であり、どの辺りが魅力的なのかというと、スッとしていて、なにか芸能の世界にいる人のような感じがするからだ。「芸能の世界にいる人のような感じ」というのは、日常とは違う感覚があるからで、どこか物語の中にいるような、遊離した感じがするのだ。

彼女はシャワーを浴びている。僕も浴室にいる。彼女は、日常とは違う言葉をしゃべっている。日本語ではなく、どこの言葉かはわからない。その言葉のすべてを理解できるわけではなないが、僕も日常とは違う言葉を使って、彼女とやり取りをしていた。

「これは○○という塗り薬か」と尋ねると、彼女は「そうだ」と答える。

彼女にはアトピーがあり、薬がなければ暮らせない。そのアトピーは重く、使用する薬も強いものだ。彼女の腕にはリスカの痕が何本もある。自分の体を傷つけることはしないほうがいいけれど、彼女のアトピーと薬から逃れられない生活のことを考えると、リスカをしてしまうことも仕方がないことなのだろう。僕もその傷を見て、「仕方がないのだな」と思った。

彼女は僕に、その塗り薬を塗ってくれという。僕はその薬を彼女の体に塗りたくるが、彼女の体はみるみる蕁麻疹のような発疹に覆われていく。彼女は「かゆいかゆい」と訴えながらも、苦悩とも快楽ともいえない表情を浮かべ、日常とは違う言葉で何やらつぶやいている。

彼女は現実から遊離している。

僕は彼女の体に薬を塗る。

彼女の体は、赤黒い発疹とどろどろした軟膏にまみれている。
 
僕はその体を見て、艶めかしいと感じた。