魔法の座椅子。

class-夢。

光景-大イベント。




そこは大きなグランドで、大きな催し物が開かれています。

僕たちはその催し物に参加します。

その催し物は観光地のイベントのようで、いくつもの出店や企画があるようです。
明確なテーマのあるイベントではなく、どちらかというと、なんでもありのごった煮的な万博みたいな感じです。

僕たちはそのイベントに参加します。

集まった仲間には統一感がありません。

幼い頃の同級生でもあり、現在の仲間であり、職場の同僚でもあり、なんだかとりあえず集まれるだけの仲間でそのイベントに参加しているようです。

その企画の参加者は、僕らも含めて本当に大勢です。

開催にあたり、まず、参加者はみんなグランドに集合します。
そして、巨大な円になってみんなで手をつなぎます。
これは、イベントの導入のようなもので、イベントを盛り上げるためのアイスブレイクでもあります。
円になって手をつなぐのですが、この手のつなぎ方は少し特殊です。
ちょっと難しい手のつなぎ方をすることで、みんなで教えあったり、失敗したりと、仲が深まります。
手をつないで巨大な円を作っては、また手を離して別の人と手をつなぐということを繰り返します。
僕も見よう見まねで手をつないでいきます。

若干気分も高揚し、楽しい。

僕は手をつないで円を作って、また離して、別の手をつなぐべき人を探します。

手をつなごうと近づいていったカップルは、僕の知り合いです。
しかも。
そのカップルの女性のほうは、前に僕が興味をもって仲良くなって、しかし恋人にはならなかったくらいの仲の人です。
僕はニコニコしながら近づいて手をつなぐのですが、なんだか気まずい。
なぜならば、僕はなぜか、彼らが近々結婚するということを知っているからです。
そして、彼らがお付き合いをしているのは、なぜか僕しか知らないので、気まずいとしてもそれを顔に出してはなりません。
周りの仲間は、彼らは恋人同士ではなく友人同士と思っており、僕も彼らの友人だから、僕も友人のように振舞わなければならないのです。

そして、僕がこのカップルの間に入り手をつないだところで、この手をつなぐレクリエーションは終了です。

こうして作り上げられた大きな円は、分断され一列になり、先頭から順番に会場をめぐっていくように指示されます。

僕は、そのカップルや仲間とともに、会場を回ります。
出店とか露店とかいろいろあるなか、僕は「いつ彼らは結婚することを発表するのだろう?そのとき僕はどんな表情でいればいいのだろうか?」と、やきもきしながら進んでいきます。

しばらくすると、そのカップルがタイミングを見計らって結婚することを発表します。

仲間はその発表を盛り立てます。
冷やかしやどよめきや、このイベントに参加している見知らぬ人たちも巻き込んで、大盛り上がりです。

僕の仲間は、僕が彼女に興味を持っていることを知っているから、僕が相手なんじゃないか?って思っているみたいだけど、実は違っていて別の男性なのだとわかると、さらにどよめきが起こります。

僕は勤めて冷静を保ち、心の底から拍手をして、祝福の言葉を述べます。
おそらく、そうした真摯な態度で接することが彼らに対する礼儀作法だと思うし、少し形式ばったやり方で祝福したほうが、こうした複雑な感情は処理できると思ったからです。

そして、僕はその彼女が注いでくれたジュースを飲みます。

・・・僕は少しおどけてみたり、少しテンション上げてみたり、きっと傍から見ると痛々しいコケティッシュな姿だったんだろう。。。

そこから、僕は不思議な座椅子に座っています。

その座椅子は、後ろに寄りかかれる丸椅子で、すわり心地がとてもよいものです。
そして、僕はこの座椅子を利用できます。
僕はこの座椅子に備わっている能力を利用して、ふわふわと宙に浮くことができるのです。
地面から反発するような感じで、念じると上に上がったり下に下りたい、前後左右、自由自在に動けます。

周りの仲間は、座椅子に座って空を飛んでいる僕を見ても、さして驚きません。
どうやら僕が座椅子で空を飛べることは、みんな知っているみたいです。

この座椅子に乗りながら、僕は一人でイベント会場を回ります。

おそらく、僕は動揺していることを仲間に悟られたくなかったんだと思います。
出店を楽しんだり、企画に参加したりと、積極的に参加しながら会場を回ります。

同級生や今の仲間や、いろんな人に挨拶しながら会場を回ります。

さっき祝福したカップルは、ずいぶん先の方に行ってしまったようだ。

僕もそこにいって少し話しをして祝いたいけど、こう人がごった返しているとなかなかたどり着けない。
それとも、僕はこの会場を楽しむことを優先させたほうがいいのだろうか?

僕は空飛ぶ座椅子で快適に移動しながら、会場を放浪します。

たどり着いたイベント会場は、デイサービスでした。

僕の職場の同僚が利用者を集めて、ボール遊びをしています。
僕は、「こんなイベントの日にも仕事なのか。大変だなぁ。」思いながら、その会場に入ると、僕が知っている利用者も参加していて、「○○さん(←僕の名前)もやってきなよ!」と声をかけられます。
僕は少しうれしく感じて、座椅子に座ったままボール遊びに参加します。
しかし、僕は今日は仕事の日ではないので、少し参加しただけでこの会場を去ろうとします。

去ろうとしたとき、僕を呼び止めた利用者から言われた一言。

「○○さん(←僕の名前)はアーティストだから!」

僕は複雑な思いでこの会場を後にします。