還らない病院。

class-夢。

光景-病院。




僕は、とある辺境の病院で勤務しています。

その病院は、屋上に巨大な観音様が乗っかっていて、夜はにライトアップされます。

その日の僕は夜勤で、病院内を巡回しなければなりません。

屋上も巡回せねばならず、屋上に上がって観音様をライトアップさせる装置を操作する仕事があるようです。
階段を上り、屋上のドアをあけると、そこかしこに黒いロープが張られています。
このロープは、観音様を固定するためのものみたいです。

ロープを避けながら歩いていると、いつの間にかあらぬ場所にたどり着きます。
それは急な崖のようなところで、下には緑色の沼が見えます。

僕は足を滑らせ崖を落ちます。
落ちまいと必死に抵抗するのですが、ずるずると沼目掛けて落ちて行きます。
ずるずると落ちて行く中で確認できた光景は、積み上げられた石の山です。
賽の河じゃないけれど、そこかしこに小石が積み上げられ、小さな山になっています。
僕は、「ああそうか。ここは病院だ。人が死ぬのだろう。開院して何十年も経っているようだから、きっと多くの人が死んでいるのだろう。この場所は知られない秘密の場所で、残された家族や友人たちが故人を供養するために、訪れては小石を積んでいるのだろう。」と思いました。

だがしかし。
僕は崖をずり落ちている状態なので、自分の体の動きを思い通りにできません。
積み上げられている小石の山に次々と体が当たってしまいます。
小石がばらばらと落ちていくたびに、僕は申し訳ない気持ちと、罰当たりなことをしているという思いを感じます。

結局僕は、この緑色の沼に落ちてしまいます。

沼に落ちてからも、小石の山をばらばらと崩してしまう感覚はしばらく僕についてまわります。
その不在の感覚を得た瞬間、僕はこの沼に目に見えない“ナニモノカ”がいることを知ります。

この沼には小さな小島があります。

僕はこの小島にはい上がります。
するとそこには食事が用意されています。
お供え物のようにも見えますし、誰かが食べるために用意した食事のようにも見えます。
僕は、「やはりここには誰かがいるのだ。薄気味悪いところだ。はやく抜け出さなければ。」と思い、落ちてきた崖に近づきます。
その崖をよくみると、いくつもの彫刻が施されています。
その彫刻は、縄文式土器の模様のように、線上で渦を巻いています。
その模様は人の顔のようにも見え、表現できないようなもの悲しい表情をしています。


・・・目がなく、口をぽっかりと開けている。。。
悲しげだけど、絶望の表情ではない。
絶望というと、自分の置かれている状況を把握して、能動的に“自分は絶望している”と判断しているというようなニュアンスがあるが、この彫刻はそうではなく、何もない空虚感というか、虚空を見つめているようなもの悲しさが表されている。


僕はなんとか崖の上に上がる足場を見つけたのですが、この足場は人骨でできています。
ますます不気味な感じになり、人骨の足場を登ろうとします。
そのとき、崖の上のほうに人の気配がします。
それは仕事の同僚のようです。
どうやら、巡回の帰りが遅いことを心配して、僕を迎えにきてくれたようです。

僕はホッと胸を撫で下ろしたのですが、その同僚は、なんの躊躇もせずに崖を下ってきます。
しかも、満面の笑顔で、遊園地のアトラクションを楽しんでいるようなはしゃぎっぷりで崖を降りてきます。
僕は“ありえねー”とか思いながらも、同僚がいればなんとかなるだろうと思ってたんですが、この同僚は沼まできて、小島にはい上がると、そこにあるお供え物のような食事を嬉しそうに食べてしまいます。
もう。
もう。
ぱくぱくむしゃむしゃ食べて、食べ終わったら自分で持ってきたプリンを食べだして、やりたい放題です。

僕は、「こんな重苦しい場所で、なんと礼儀知らずな人間なんだろう。それともバカなのかもしれない。こんなことをしていたら、見えない“ナニモノカ”が来てしまう。なんとかしなければ。。。」と思いながら彼の行動を見ています。