グルは寝ている。

イメージ 1

友達などとお酒を飲みに行ったりして、その後カラオケに行ったりして、みんなが歌を大きな声で歌いたいのだけれども、最終電車の時間は次々とせまってくるものであり、中には最終の電車の時間に合わせて帰る人もいるけれども、その他の多くの人の“歌を歌いたい”という気持ちのほうが強くなって、とりあえず朝までカラオケをしようということになって、そうこうしているうちに午前3時頃という微妙な時間になって、ほんの少しだけだれている感じになったときに、どんな歌を歌うのが“粋”なのだろうか?



脳内グルは休暇中。



午前3時というのは、不安な時間です。
例のグルが死んだのは午後3時であり、その正反対にある午前3時は、うぞうぞとした意味のわからないものがぞわぞわしだす時間でもあります。

丑三つ時は嫌なものだ。

丑三つ時は不安な感じがするので、歌うとすれば不安な歌が良いのかもしれない。
僕が知っている不安な歌は、「ドナドナ」です。
ドナドナは、どのようにしても決して避けることができない“死”を受け入れる動物の話しです。

歌の中の動物は死ぬんです。
ほぼ確実に死ぬんです。

世の中にはいくつもの主義や主張があって、たいてい、そうした主義や主張は一つの暗黙の思い込みを前提としています。
その暗黙の思い込みとは、「人は原理的に幸福を目指すものだ。」というものです。
この無反省に思い込まれた大前提を動因に、主義や主張といった世界像を思い描いて、その思い描かれた世界像を武器のように駆使して、世の中に働き掛けていきます。




牛です。

ドナドナの中に出て来る動物は牛です。




この牛は、なにもしない。



世の中に働き掛けない。


世の中に働き掛けないということは、働き掛けようとする動因が削ぎ落とされているといえます。
その動因とはあの暗黙の大前提、「人は原理的に幸福を目指すものだ。」です。
幸福とか不幸とか、そうした価値評価を一旦括弧に入れて、その価値評価が成立する以前のすれすれの現実に目を向けると、そこには一つの可能性として、この牛のような“なにもしない”という在り方あるわけです。
僕たちが暗黙のうちに思い込んでいる大前提はまさしく一つの思い込みでしかなく、その前提が総崩れしてしまうような在り方もあるわけです。


そうした、僕たちを取り囲んでいる日常に抗って、諦念的な在り方を歌い上げているから、ドナドナに出て来る死ぬ生き物に不安な気持ちと味わい深さみたいなものを感じることができるのでしょう。
そして、その“味わい深さ”というのは、ある意味ロマンチシズムみたいなものなのかもしれない。
それは、決して経験することができないような、観念論的な死に対するロマンなのかもしれません。


だがしかし、友達などと行ったカラオケで、丑三つ時に「ドナドナ」を歌うことが粋かというと、決してそうはならないでしょう。

なぜなら、夜は暗いから不安で、丑三つ時は不安で、「ドナドナ」は不安で、同じ“不安”という性質が3回も重なって出てくることになるからしつこい。

無粋だ。

予定調和的な不安しか感じられず、あんまし粋じゃない。

だとすると、丑三つ時に歌う歌は、こうした不安とは正反対な、ハイテンションな歌になるのでしょうか?

もちろん、それも良いと思います。

みんなが知っている元気な曲を歌うと場が和むし、良い雰囲気になって盛り上がると思います。
それは真っ当な手段です。

だがしかし、ここで問題にしているのは、“何が粋か?”ということです。

和ませたり、良い雰囲気を作りあげることが目的ではありません。




脳内グルは就寝中。




・・・そこで、“「グリーングリーン」を死ぬほど真面目に歌ってみる。”というのはどうだろうか?


“死ぬほど真面目に”なんです。

ほんの少しでも、怯えたり、躊躇してはいけません。

怯んではいけないのです。

で。

グリーングリーン」の歌詞は、実は少し悲しい。
だがしかし、歌詞をよく読み込むと、一体なにを訴えたいのかよくわからない。
“世の中にはなんだか悲しい出来事があるのだなぁ”ということはよくわかるのだけれど、何が悲しくて何に耐えなくてはならないのか、少しもわかりません。

そもそも、なんでパパは家をでていったの?

離婚でもしたのか?

そうした、“思わせぶりな雰囲気だけ”という、主張が不在の歌詞内容は、実に虚無的で、結構好きです。

ですので、「ドナドナ」のような逸脱した日常性ではなく、なんだか明るい曲だけど、なんだか物悲しい歌詞で、しかしそこには何の主張もなく、ただただ思わせぶりな雰囲気だけがあるという、「グリーングリーン」を歌ってみるというのは、“粋”に属するのではないでしょうか?

そうしたわけで、もし、条件が整うのなら、「グリーングリーン」に挑戦してみたいと思います。。。